【2019年11月24日記】10兆円の経済対策成立の場合の日経平均株価の来年の展開

【10兆円の経済対策成立の場合の日経平均株価の来年の展開】

1. 来年の日経平均へ影響を与えそうな材料が出てきた

来年、日経平均株価は、16000円以下まで下げると予測してきました。

この予測を迷わす材料が出てきました。

自民幹部が(歳出を10兆円、経済対策のために上乗せする)真水で10兆円、(企業等の負担を含めた事業全体)事業規模で20兆円の大規模な補正予算を提案したからです。

財源は、赤字国債を増発すると言っているので、国が借金して、来年のGDPを大幅に拡大させるという提案になります。

以前より書いている通り、市場全体を持ち上げるためには、歳出拡大と量的な金融緩和のどちらかが必要です。

見せかけとはいえ、日銀が金融緩和している状況で、歳出を拡大するのですから、まったく影響がないとは言えません。

そこで、今回は、大規模な経済対策が実行された場合の株価への影響の仕方を考えてみます。


2. NYダウが来年下げるという見方に変更はない

来年の日経平均株価が16000円以下へ下げると予測している理由は、来年のNYダウが弱気パターンの年になると見ているからです。

米国市場に引きずられるだけでなく、NYダウの下げ過程で円高が進み、日経平均株価は、国内の景気動向にかかわらず、NYダウと同程度か、それ以上の値幅の下げ場面になると推測しています。

2019年、米国は、2008年以降の財政、金融政策の効力が最大となって、来年以降、徐々に下がってゆきます。

株価は、現在よりも先の方が期待できるからこそ、価格が上がります。来年の期待値が今年と同じか低いなら、来年の株価が積極的に今年の高値以上を目指す展開を考えにくくなります。株の値動きの変化で利益を得ている多くの市場参加者は、上値余地が限られているなら、買いやすい値位置まで下げる作業を実行します。

来年のNYダウは、上値を抑えられやすい時期に下げ幅を拡大して、弱気パターンの年になると考えられます。

日本の景気対策が米国市場の来年の期待値を押し上げる効果があるわけではないので、NYダウの弱気見通しには変更がありません。


3. 大規模経済対策後の日経平均株価

昨年12月に筆者は、「勝ち続ける投資家になるための 株価予測の技術」という本を出版しました。

ここでは、日経平均株価の90年以降の過去6回の大幅上昇局面の前後で、大規模な経済対策が実施されてきた経緯について紹介しています。

日経平均株価が1年程度、あるいはそれ以上に上昇の流れを作るときには、その前後で株価を押し上げる政策が実行されてきました。

それが即効性のあるものか否かによって、日経平均の予想の仕方も変わります。

図表01 日経平均株価月足と経済対策
図表02 日経平均株価月足と経済対策
図表03 日経平均株価月足と経済対策

図表01から03は、1990年から2012年の期間で大規模な経済対策を決定した場所を示しています(13年以降のアベノミクスは省略します)。

図には、決定した月の始値に線を引いています。

状況や規模、歳出の増え方やそのときの金融政策次第で、日経平均の動き方も変わりますが、その点は省略します。すべての状況を考慮した上で、文章では省いていると考えておいてください。

図を見ると、93年4月、95年9月のように、上昇を開始している途中の初期段階で経済対策が発表されると、そのまま上昇局面を継続して、数か月継続する値幅の伴った上げ場面を作っています。

これは、すでに期待値が高まって上昇している状況の中で、未来への期待値を高める材料があらわれたため、その内容や効果の度合いにかかわらず、市場参加者の反応が早く、先行して株価が上げているからだと考えられます。

92年8月、98年11月、02年12月、09年4月のように、価格が十分に下げ切ったと推測できる状況では、決定した後、あまり日柄をかけずに下値堅さを確認する動きを経過して、上昇の準備に入っていることがわかります。

底値と見られているような以前の安値に位置している場合、近い未来に株価を押し上げると推測できる材料が出てきたため、積極的な売りが入りにくくなることであらわれている動きだと考えられます。

経済対策は、底値になる可能性があると多くの市場参加者が警戒している値位置や、上昇を開始した初期段階で、比較的早く効き目があらわれると考えられます。

量的な金融緩和は、市場へ直接お金を入れる政策なので、即効性があります。

減税は、すべての企業、個人に対して、翌年度の収入増加をもたらすものなので、銘柄を選別する必要もなく、しっかりと早い段階から効果をあらわすと考えられます。

一方で、公共投資等での歳出拡大は、どこの企業への影響の度合いが大きくなるのかなど、翌年以降の売り上げ、利益等の変化を見てゆくしかありません。売り上げの伸びる企業が多数出てきますが、それを事前に知ることができません(推測の範囲です)。

公共投資等での歳出拡大は、即効性がなく、株価のそれまでの流れを急激に変化させる威力がないと考えられます。

図を見ても、前述したチャート上での条件がそろっていないときには、すぐに効果があらわれていません。

ただ、多くの企業での期待値が高まるのですから、時間をかけて効いてきます。

リーマンショックの後、NYダウは、2009年3月まで大幅に下値を掘り下げる展開となりました。

一方で、日経平均株価は、2008年10月の安値付近で下値を支えられて、その後の価格が下げても、2008年10月の安値が意識される値位置で止まっています。

この動きは、08年8月、10月の経済対策が効いているのだと考えられます。


4. 日経平均株価の想定できる状況

以下では、来年の値動きがあらわれる状況について、順番に書いてゆきます。

これまで、日経平均株価の16000円以下という値位置を想定してきたのは、2008年10月以降の上げ幅全体の修正局面へ入ると見てきたからです。

しかし、今回の経済対策が効力のあるものなら、来年は、下値が限られると考えられます。

上げ幅全体の修正は、日銀が出口戦略へ入った後になる可能性が出てきました。

NYダウの弱気に沿った動きになる場合の日経平均株価の来年の下げ幅の目安は、15年6月の高値20952円から16年6月の安値14864円までの下げ幅(6088円幅)と同程度の値幅が考えられます。

18年10月の高値24448円からの下げになる場合、下値の目安は18360円前後が挙げられます。

今回の経済対策は、即効性がないと考えられますが、来年以降、徐々に効果があらわれる可能性があります。

3月頃までの期間で、底値と推測できるような値位置になるなら、なおさら、強く下値を支えられる可能性が出てきます。

4月から6月頃までの期間、NYダウが積極的な下げ場面にならなければ、NYダウよりも日経平均株価の上げ幅が大きくなりやすいと考えられます。

来年のNYダウが1年を通じて下降の流れを作ると推測した場合、過去の弱気パターンの年の展開から想定できる下げ時期は、1月~3月、5月~10月が挙げられます。

1月~3月、8月~10月の期間は、急落して、1か月で2000ドル幅以上の下げ場面になることも考えられます。

日経平均株価は、来年、長く下げの流れを継続せず、下値を支えられる可能性があります。そのため、6088円幅の下げ場面を作る場合、NYダウが一気に下げることによってあらわれる可能性があります。

そのような下げは、3月頃までの期間か、または8~10月頃になると考えられます。


5. 日経平均株価の今後の想定できる展開

これまで、日経平均株価は、上げ幅全体の修正局面へ入っていると見てきたため、2018年10月の高値24448円を超えられないと予測していました。

15年6月から16年6月までと同程度の値幅の調整と見るなら、24448円を超える展開は、想定の範囲内になります。

図表04 日経平均株価週足と予想線

図表04の日経平均株価週足です。

赤の実線が24448円を超える場合の展開、青の実線が超えない場合の展開になります。

今後の価格が24448円を超える動きがあるとするなら、考えられる状況は、来年の上昇分を先取りする格好で上げ幅を拡大する展開です。

価格は、12月、または1月頃までの期間、堅調に推移した後、上値を抑えられると考えられます。

その場合、1月から2月の期間で、一気に下値目標値へ到達する展開を考えにくいため、6月頃までの期間、下げにくい、上げにくい値動きが続き、7月から10月頃までの期間で、下値の目安になる場所へ到達すると考えられます。

今後の価格が24448円を超えられずに下降を開始する場合、3月頃までの期間で、下値の目安になる18360円前後まで下げる可能性が出てきます。

その場合、3月から6月頃までに上げ幅の大きな動きを経過して、7月以降、NYダウが上値重く推移する過程で、日経平均株価が3月の安値を目指す動きになると考えられます。

図表05 日経平均株価日足と予想線

図表05は、日経平均株価日足です。

図表04の赤の実線、青の実線になる場合の年末頃までの想定できる展開を示しています。

日経平均株価が上昇の流れを作り、24448円を超える展開は、米中貿易協議の結果を待っている状況で、(進展のニュースをきっかけに)NYダウに積極的な買いが入る、または想定以上の結果によって、一時的に大きく上昇することによってあらわれると考えられます。

NYダウの上昇過程で、日経平均株価は、経済対策を先取りする格好で上げ幅を拡大することで、24448円前後まで上昇すると考えられます。

こちらの展開になるなら、11月21日の安値22726円が押し目底になって、現在は、すでに24448円を目指す動きへ入っていると考えられます。

そのためには、今週、一気に11月8日の高値23591円を超える程度まで上昇して、強気の流れの継続を示す必要があります。

週明け後の価格が上値重く推移して、今週中、23591円まで下げる展開になるなら、その後は、青の実線の展開になる可能性が大きくなります。

その場合、12月中に値幅の伴った下げを経過する公算です。


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