【NYダウの史上最高値更新の意味と今後の展開】
1. 年末へ向けて年間の最高値を更新する状況とは
10月27日の記事では、「日経平均株価が年末から年初にかけて押し目をつけて、3月から6月頃までの期間で値幅の伴った上げの流れを作る」という過去の値動きのパターンを紹介しました。
年末に向けて押し目をつけて、翌年の4月頃へ向けて上昇する傾向は、NYダウの方が顕著にあらわれています。
1990年から2018年までの期間で、11月の始値よりも4月の始値の方が高かった年を調べると、29年中、23回が高くなっています。
11月の始値よりも、4月の始値の値位置が低かった年は、29年中6回しかありません。
NYダウは、9月から10月頃の期間で下値を試す動きを経過して、価格が下がることで、翌年へ向け、積極的な買いの入りやすい値位置を模索し、その後、上昇の流れへ入っています。
過去の値動きからは、10月から12月までの期間が、翌年の上昇へ向けた準備の期間になっていると見ることができます。
以上のような季節性を考慮すると、11月、12月にその年の最高値を更新している理由には、(1)翌年へ向けた期待値が高く、株価が下がりにくい状態になっている、(2)翌年へ向けた上昇分を先取りして上げている、(3)上げやすい時期に短期的な買い材料に注目が集まって上昇している、などのことが考えられます。
(1)の場合、翌年の株価が現在の値位置よりも明らかに高くなるだろう環境が整っていることであらわれている動きだと考えられます。
日柄と値幅の伴った上昇の途中だと推測できる状況ですが、期間や値幅にゆとりがある分だけ、どの程度まで行けるかを探る動きになりやすいと言えます。
このような状況での値動きは、図表01の2010年から2011年にかけての上昇の流れのように、小幅なジグザグを繰り返しながら、年末へ向けた上げ場面を作ると考えられます。
(2)の上げは、翌年へ向けた期待値と季節的な強さに、短期的な買い材料が加わることで、翌年に上げる分を先取りする格好であらわれている動きだと考えられます。このような状況での上げは、年末へ向けて、勢いの強い上昇になると考えられます。
図表02の2013年から2014年は、(2)の典型のパターンだと言えます。
年末へ向けて、一気に上げ幅を拡大しています。年末へ向けた急上昇は、買い材料が強い人気化によって、翌年分を先取りしているので、年明け後、上値を抑えられることになります。
チャートでは、年明け後、すぐに勢いの年末の上げ分を押し戻される動きを経過して、その後、年末の高値付近で上値を抑えられる動きへ入っています。
(3)は、翌年へ向けた期待値が高くはないが、短期的に下値を支えられやすい材料があり、下げ難い状況を継続して、11月まで高値圏で推移したことであらわれる動きだと考えられます。
11月以降は、下げにくさを演出してきた短期的な材料に季節的な強さの後押しが加わり、一時的に上昇が勢いづいて、高値を更新する展開になっていると考えられます。
図表03の2014年から2015年の展開は、その典型です。
チャートでは、10月から始まる勢いの強い上昇が、18000ドル付近で強く上値を抑えられて終息しています。上値を抑えられた後は、もう上昇への余力なく、12月に価格がいったん大きく下げています。大納会へ向けて値を戻しますが、その後も18000ドル以上が強力な壁となって、5月以降の急落へとつながっています。
2. 2019年のNYダウの11月の最高値の更新は(3)のパターンの公算か
9月6日の記事では、「2009年以降の切れ目のない金融、財政政策が尽きたため、株価対策として残されていることが金利の引き下げくらいしかない」、「来年へ向けた期待値が本年よりも低いので、NYダウは積極的に高値を更新する展開にならない」と書きました。
現時点で見方を変更すべき状況の変化がないので、NYダウは、来年へ向けて積極的に高値を更新する展開にならないと推測できます。
NYダウは、昨年10月から12月にかけて、FRBの急激な金融引き締めを材料に売りたたかれました。1月に政策転換を明確にして、利下げを開始したことで、本年は、8月頃までの期間で、下げた分を戻す動きになっています。
2019年は、2018年までの財政政策の効力が最大となり、足元の景気がいいということで下値を支えられて、米中貿易協議の進展を短期的な材料にして上値を試す動きになっています。
今回の米中貿易協議は、穀物という両者の思惑が一致する部分からお互いの妥協点を探る状況となっているので、少なくともなんらかの合意が得られるという期待があります。そのため、10月以降、協議が進展したというニュースが出ると上昇が勢いづいて、11月へ入り、季節的な上げやすさの後押しもあり、史上最高値を更新する展開となっています。
しかし、来年へ向けた期待値で盛り上がっているわけではないのですから、米中貿易協議の結果がどうであれ、年末までに材料出尽くしとなって上値を抑えられると考えられます。
米国は、12月15日に第4弾の追加関税を予定しています。終点となる日にちがはっきりしている中で、現状を継続できる期間は、最大で12月上旬になる可能性を考えておく必要があります。
図表04のNYダウ日足の青線は、本年が(3)のパターンである場合の推測できる今後の展開の目安を示しています。
図表05は、日経平均株価の今後の想定できる展開を示しています。
NYダウが図表04の青の実線の展開になった場合、赤の実線のような展開が考えられます。12月の下げ幅は、円高を伴って、日経平均株価の方が大きくなる可能性があります。
12月に下値堅く推移する場合、1月に一段高を経過して、青の実線のような展開になる可能性が出てきます。
日経平均は、15日までの値動きを考慮して、前週のシナリオを少し修正しています。