無料メルマガ2020年9月23日記

2020年9月23日記

【NYダウは今週中に押し目底を確認するなら年末へ向けて大幅高となる公算か】

〇 21日のNYダウ急落の要因

NYダウは、9月21日に9月10日の安値27447ドルを割れて、大幅安となっています。
今回の下げは、EUからの離脱へ向け、英国の国内市場法の審議が21日、22日と行われることに関連して、無秩序な離脱への不安感が再燃していることや、欧州での新型ウイルス感染拡大による、都市封鎖への懸念などが影響していると言われています。
これらのことに加えて、21日の下げは、日本時間、21日2時に世界で一斉に発信されたフィンセン文書がきっかけになっているとも言われています。
フィンセン文書は、米財務省の情報機関(金融犯罪取締ネットワーク局、Financial Crimes Enforcement Network、FinCEN)に金融機関から届けられた「疑わしい取引」に関する秘密報告、それに関連する資料のことです。この資料には、1999年から2017年の間で、各国の金融機関が犯罪組織のマネーロンダリングにかかわっていたことが示されています。
金融機関が不正にかかわっていたことが明らかになったことで、市場の資金が安全資産へと移動したことで、株価の下落へつながったと考えられます。

〇 株価を長く、大きな下げへ導く2つの要因

ところで、株価を1週間以上の長い期間で、下げの流れを作り、大幅な下落へ導くには、「時期」「現金化の動き」が必要です。
時期とは、通常、下げの流れを作りやすい時期のことです。例年でも、材料出尽くしとなって、株価が下げやすい時期のことです。
下げやすい時期は、多くの市場参加者が様子見となっている状況の中で、株価を押し下げる材料が出てくると、その他の時期よりも、下げ幅が大きくなりやすいと言えます。
ただ、おおまかな流れが上向きなら、通常、株価の急落は、一時的な動きで終わり、1営業日から1週間程度で一気に下値の目安になる場所へ到達して、その後、すぐに下値堅い動きへ入ります。
上昇の流れが転換して、長く、値幅の大きな下げへ導くには、多くの市場参加者が投資資金を回収して、現金化へ向けて動き出すような材料が必要です。
時期と材料がそろうとき、株価は、長く値幅の大きな下げ局面を作り出すことになります。

〇 リーマンショックは2つの要因が重なった

聞き飽きたかもしれませんが、2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻は、まさに2つの要因が重なったことで、株価を長く、値幅の大きな下げへと導きました。
9月は、米国の年度末で、10月の決算期を前に、例年、株価が上値を抑えられやすい時期です。
この時期に大手投資銀行の破綻のニュースが出たことで、関連の金融機関、大手企業の連鎖的な倒産のリスクが拡大して、市場から一気に資金が引き上げられる動きとなり、株価は大幅に下落しました。
NYダウは、9月19日の高値11483ドルから10月10日の安値7882ドルまで、16営業日で、一気に3601ドル幅の下落となり、その後、翌年3月まで下げの流れを継続しています。

〇 ドバイショックでは株価がほとんど下げなかった

2009年11月25日、ドバイ首長国政府は、11月25日に、ドバイの代表的な政府系持ち株会社のドバイワールドと、その傘下の不動産開発会社のナキールが抱える全ての債務の支払いを猶予してもらうよう債権者に要請すると発表し、「ドバイの支払い能力」への国際的な懸念から信用不安が発生しました。
英国やドイツ、フランスなどの主要株式市場で株価が急落したと言われています。
この材料は、リーマンショック後の大規模な金融緩和を米国や欧州で実行されている状況で、株価が上昇の流れをつくりやすい年末へ向けた動きの中であらわれています。
その日だけの動きとせず、長い期間でチャートを見ると、NYダウや、欧州各国の株価指数は、2009年11月末のどの下げがドバイショックによるものかわからない程度の動きにしかなっていません。

〇 パナマ文書は株価に影響はなかった

今回のフィンセン文書と近い材料には、2016年5月10日に世界へ向けて公開されたパナマ文書があります。
2016年4月にパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した、機密資料の分析結果が公開されたもので、租税回避地を活用した課税逃れの実態が明らかになりました。
パナマ文書は、市場参加者に不安感を与えるものになる可能性がありましたが、巨額の損失が出たわけでもなく、急速に現金化へ向けて市場参加者が動く要因になるものでもありません。そのため、NYダウは、5月という上値を抑えられやすい時期にあっても、積極的な下げの流れへ入る展開になりませんでした。

〇 フィンセン文書に意味はないが、9月末という時期に注意が必要

フィンセン文書は、例年なら、株価が下げても気にしない材料ですが、11月に大統領選挙が迫っている年の9月末、世界で同時に配信されていたことが気になります。
株価の下落は、トランプ大統領側の不利につながる材料になります。
反トランプ大統領側のメディアが、株価下落を意図して、なりふり構わずに仕掛けたものであるとするなら、このまま終わるとは考えにくいからです。
9月末から10月上旬の時期は、NYダウが下げの流れを作る場合、一時的にせよ下げ幅が大きくなりやすい時期です。
結果として、1年間上昇し続けた2019年でさえ、10月1日の高値27046ドルから3日の安値25743ドルまで、3営業日で1303ドルの下げ場面を作っています。
そのような時期に、株価を多くの市場参加者が消極的にならざる得ない材料を積極的に報道されるとするなら、実体のともなわない下げが10月上旬までの期間だけ、演出されることも十分に考えられます。

〇 NYダウは今週中に押し目をつける動きになるかが焦点

本年のNYダウは、積極財政、金融緩和が実行されている状況の中で、再び3月の安値18213ドルを目指す動きにならないと考えられます。
11月以降、年末から翌年の年初へ向けて、例年、株価が上昇の流れを作りやすい時期へ入ります。
株価が大きく下げる可能性があるとするなら、この後、10月中旬頃までの動きの中であらわれるだけだと考えられます。
言い換えると、NYダウは、このあと、どの値位置で押し目底を確認できるのかによって、年末の値位置が見えてくるわけです。
下げ幅の大きな動きになるなら、当然、11月以降に価格が上昇を開始したとしても、年末までは、9月の高値29199ドル、あるいは2月の高値29568ドルを目指す動きで精いっぱいになると考えられます。
一方で、目先の下値余地が限られるなら、高値圏で十分に上昇へ向かう準備を整えることができるため、10月、11月以降、2月の高値を大きく上回る上げ場面へ入ることも十分に考えられます。
今週の動きは注目したいところです。

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