無料メルマガ2020年11月9日記

2020年11月9日記

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□■□   5. 来年以降、NYダウは戻せば売られる展開となる公算
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【バイデン氏が大統領なら上昇できる期間は来年5月頃までになる公算】

10月25日の記事では、
大統領がバイデン氏になっても、
NYダウが少なくとも来年前半まで上昇の流れを作る
可能性が大きくなったと書きました。
この見方は、10月末までの動きと、前週の上昇を確認して、
「年内に30000ドル以上を目指すシナリオ」
「来年3月、5月頃までの期間で30000ドル以上を目指すシナリオ」
「12月にいったん10月30日の安値26143ドル以下へ下げるシナリオ」
に修正しています。

バイデン氏が大統領になる場合、NYダウの上昇は、
上昇傾向の強い年末から5月頃までの期間に、
追加の経済対策が後押しすることであらわれると考えられます。
追加の経済対策の効力がなくなり、上昇の流れが止まると、
その後は、上値重い動きになる可能性が大きくなります。

【バイデン氏の政策のおさらい】

以下は、バイデン氏が選挙期間中に述べていた政策をまとめたものです。
(1)国内産業基盤の強化
(2)長期的に強靭(きょうじん)な経済の実現
・大統領就任1期目の間に、
インフラの現代化などのために
4,000億ドル分の米国製品・原材料の連邦政府調達を行う
・中国の不公正な貿易慣行への対抗を念頭に、
電池技術や人工知能、バイオ技術、クリーンエネルギーなどの
新興産業の研究・開発に3,000億ドルを投資する
・4年間で2兆ドルの脱炭素社会実現のための投資、数百万人の雇用を創出
・2035年までにCO2の排出をゼロにする
・5年間で5億枚の太陽光パネルを設置
(3)働く親への支援強化
・10年間で約8兆ドル規模の介護・保育政策を打ち出す
(4)労働者層と中小企業への支援強化
・連邦最低賃金の引き上げ、労働組合への後押し
・オバマケアを拡張して無保険者が公的な保険に加入できる選択肢を提供する
・トランプ政権で21%に下げられた法人税率を28%に引き上げる
(製造業支援に7,000億ドルを投じ、
500万人の雇用を生み出すための財源として、
巨大IT企業や富裕層への増税を検討、規模は10年で3兆ドル超と試算)
・金融規制強化
(5)人種間の平等をもたらす包括的な方策
・マイノリティー層とそれ以外の所得格差の是正
・住居選定の選択肢の拡大、起業家支援、教育機会の提供を推進する

2019年の世界の太陽光発電メーカーシェアは、
1位が「Jincosolar」(中国)
2位が「 Trinasolar」(中国)
3位が「Canadiansolar」(製造が中国、本社はカナダ)
4位が「JAsolar」(中国)
5位が「HanWhasolar」(韓国)
6位が「GCL-SI」(中国)
となっています。

米国は、シェールオイルが軌道に乗り、
ようやくエネルギー輸出国へと変わりつつある場面で、
エネルギー政策を転換するわけです。
これから、中国企業に対抗して、
安いソーラーパネルを生産する工場を積極的に建設してゆくか、
中国からソーラーパネルを買うかのどちらかを選択すると、
産業基盤が強化されるようです。
中小企業への支援強化を考えているようですが、
最低賃金を引き上げて、労働組合を後押しするなら、
脆弱な中小企業など、すぐに悲鳴をあげてしまいます。
細かいことをつついてもきりがありませんが、
株価の上値を抑えるだろう最も気になるポイントは、
トランプ減税の廃止と、巨大IT企業や富裕層への増税です。

増税をしても、それを埋め合わせる分の財政支出を拡大させて、
政府が景気の後押しをすれば、景気が上向き、
経済対策の効力が切れても、そのまま経済が活発になり、
好循環へ入るという考え方が前提になった政策です。

実際、民主党には、増税と積極財政を実行して、
景気と財政の立て直しに成功した例があります。
クリントン元大統領の実行したクリントノミクスと呼ばれた経済政策です。

【クリントノミクスは米国への積極的な投資が盛んになって成功した】

90年代前半、米国は、政府の巨額の財政赤字、
日本とのあいだに生じた貿易赤字に苦しんでいました。
また、89年には5.3%だった失業率が92年に7.5%に上昇し、
89年12月に6.5%だった経済成長率が91年12月に4.25%に低下していました。
財政赤字、貿易赤字の縮小のため、
93年に誕生したクリントン大統領は、「経済再生計画」を議会で演説し、
独自の経済再生案を公表しました。
その内容は、
「増税と歳出抑制によって94年度から5年間で財政赤字を4720億ドル削減する」
「長期公共投資による国民と企業の生産性の促進策」
「2年間で320億ドルの短期的景気刺激策を実施して景気回復の呼び水とする策」
というものでした。

通常、増税すれば米国への投資資金が放れて、
景気が上向く流れを考えにくいのですが、
結果として、00年頃までに財政の黒字化に成功しています。
米国への積極的な投資が持続して、90年~00年までの期間で、
NYダウは大幅高になっています。

実は、この成功には、日本が大きく貢献しています。
93年は、
89年に始まった日米構造協議を発展させた日米包括経済協議がスタートして、
知的所有権、政府調達、自動車、保険、金融サービス
などの分野が協議さました。
このときの米国からの圧力や、
円高により、ドルベースでのGDPが米国に迫る勢いだった日本は、
米国への積極的な投資を引き受けたと考えられます。
また、94年から95年にかけて、メキシコの通貨危機があり、
日米独での3か国による協調介入が実施され、
積極的にドルを支えたことも
米国への投資を促す要因になったと考えられます。
日銀は、1993年以降、急激に米国債保有残高を増やしています。
以下は、日銀の米国債保有残高の推移です。
1990年、4220億ドル
1991年、4640億ドル(+420億ドル)
1992年、5080億ドル(+440億ドル)
1993年、5640億ドル(+560億ドル)
1994年、6330億ドル(+690億ドル)
1995年、7290億ドル(+960億ドル)
1996年、9320億ドル(+2030億ドル)
1997年、11990億ドル(+2670億ドル)

クリントン大統領の増税分は、
積極的な公共投資と、短期景気刺激策によって穴埋めして、
米国のドル増加分を引き受けた日本が、
米国への積極的な投資を実施することで、
長期的な経済成長と財政収支の黒字化を実現したわけです。

また、90年代は、コンピューターとネットの急速な発展により、
デリバティブ市場が急速に進化し、
取引量が拡大した時期です。
金融の中心となる米国への資本流入が拡大したことも、
株価の上昇の要因となっています。

【現状の米国では増税すれば景気の腰を折る】

米中貿易問題の核心は、
ビックデータやオンラインプラットフォームの主導権争いであって、
貿易額の問題ではありません。
日米構造協議での成功から、
バイデン氏が同じやり方で中国との妥協を模索し、
中国への圧力を緩めるなら、
将来的にデジタル覇権を中国に奪われることになると考えられます。
現在の中国は、人民元を使う経済圏の拡大と、
自国経済の立て直しが急務になっています。
あえて、米国経済を発展させる支援などするはずもありません。

90年代は、米国へ資金が流入する状況がありましたが、
バイデン氏の政策は、企業や富裕層への増税、労働者の権利の拡充、
自然エネルギーへの転換
(エネルギー価格が上昇する可能性のある政策)など、
米国から資金が逃げてゆきやすいものになっています。

NYダウは、
追加の経済対策の効果によって作られる上昇の流れが終息した後、
戻せば売られる展開へ入る可能性が大きいと考えられます。

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