2020年10月11日記
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1. NYダウは年末へ向けて大幅上昇局面へ入るチャート上の条件を満たす公算
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■■ トランプ大統領が自らの弱みをさらけ出したことで株価が下げ難くなった ■■
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前回、NYダウが年末へ向けて上昇の流れを作る可能性があるとするなら、
チャート上での条件は、「10月中に年間の最高値付近まで上昇すること」、
チャート以外での条件は「トランプ大統領が再選すること」
だと書きました。
(日本時間)10月7日の深夜3時頃、
トランプ大統領が自らを窮地に追い込むツイートをしたことで、
NYダウは、チャート上での条件を達成できそうです。
トランプ米大統領は、7日、
追加景気対策に関する民主党指導部との協議を停止するように、
交渉担当者に伝えたことを明らかにしました。
「選挙後まで交渉を止めるよう担当者に指示した。
私の勝利直後に勤勉な米国の人々や中小企業を重点対象とした
大規模な景気対策法案を通す」とツイートしています。
その直後、上昇の流れを作っていたNYダウは、
28354ドルで戻り高値をつけて、
(日本時間)3時から5時までの3時間で、
626ドル幅の下げ場面となりました。
チャートは、
上昇から下降への流れの転換を示す足型である「弱気の抱き線」をつけて、
はっきりとした上値の重さを示しました。
翌8日、
ペロシ米下院議長とムニューシン米財務長官が電話で協議し、
航空業界支援を含む複数の個別法案については協議を続ける考えを示しました。
9日には、
追加の経済対策を1.6兆ドルから1.8兆ドルに増額して、
野党・民主党へ再提案しています。
トランプ大統領の協議中止の発信で下落したNYダウは、
その後の方針変更によって、
前週末までに、
弱気の抱き線をつけた高値28354ドルを突破し、さらに一段高となっています。
前週のトランプ大統領は、
選挙を前に、
株価下落のリスクと向き合うことができない現状を自ら露呈してしまいました。
交渉中、相手に弱みを握られてしまった以上、
もう、選挙期間中に民主党側が妥協することなど考えられません。
交渉決裂を懸念して、株価が再び大幅安となるなら、
株価の下落を止めて、再び強気の流れへ戻すため、
大統領側は、さらなる妥協を余儀なくされると推測できます。
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■■ チャートの反転サインのダマシはトレンド継続の強いサインになる ■■
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私は、1998年に「チャートの救急箱」という本を出しています。
その内容は、
1993年頃から(もう廃刊となっている)月刊誌で連載していた
チャートやテクニカル指標の読み方をまとめたものです。
その当時とチャートの見方や考え方はかなり変わりましたが、
変わらないこともあります。
「弱気の抱き線」のような強い反落サインがあらわれた後、
その後の価格が上昇して、反落サインをつけた日の高値を超える動きは、
上げ余地が十分にあると
多くの市場参加者が考えている状況があるからこそ現れるということも、
変わらない見方の1つです。
10月6日の高値28354ドルを超える動きは、
少なくとも9月の高値29199ドル程度まで、
目先的に上昇余力を残していることを示唆していると推測できます。
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■■ トランプ大統領から譲歩を引き出すことで株価の上げ余地が拡大か ■■
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さて、トランプ大統領は、前述した通り、
自らの弱みを露呈してしまいました。
そればかりではなく、
「私の勝利直後に中小企業を重点対象とした“大規模”な景気対策法案を通す」
とまで発信しています。
民主党側は、交渉の決裂を前提として、
大統領側からできる限りの譲歩を引き出すことができます。
選挙前に合意できないとしても、
トランプ大統領が再選するなら、
交渉時の提案と同額か、
それ以上の大規模な追加経済対策を実行することがはっきりしました。
これまで、
トランプ大統領が公約をまもってきた経緯を考慮すれば、
選挙前に言質を取っておける状況は、
市場参加者にとって、
いかに重要かということがわかってもらえるのではないでしょうか。
10月末までは、追加経済対策の合意ができなくても、
大統領側がどこまで譲歩するかによって、
株価の上昇の角度(値幅と日柄の関係)が変わることも考えられます。